手仕事の湯呑が挽かれるまで

Matiass Preiss ·

湯呑は、日々のお茶のために日本で育ってきたかたちです。把手のない、背の高い器。作り手にとっては、これほど言い訳のきかない形もありません。隠れる場所がないからです。把手も蓋もなく、壁そのものから目をそらさせる装飾もありません。重さが合っていなければ、手に取った最初の一瞬でわかってしまいます。

アイスランドの工房では、湯呑を炻器の土から一点ずつ挽いています。はじまりは秤にかけた土の塊で、焼き上がりの背丈をどれくらいにするかによって、たいてい300〜400グラムのあいだです。土は乾くあいだに縮み、窯のなかでもう一度縮みます。ですから轆轤の上のかたちは、最後に手に持つ器よりつねに大きいのです。

土の芯を出す

すべては芯出しから始まります。土の塊を轆轤の天板に押しつけ、両手で一定の力をかけながら、回る面の中心へ追い込んでいきます。芯の外れた土は振れます。この段階の振れは、あとで口縁の歪みとなって出てきます。芯出しは外から見れば静かな作業です。実際には仕事のなかでいちばん体を使うところで、土は押し返してきます。それが折れるまで、こちらは動かさずに抑えつづけます。

芯が出たことは、手のひらの下で土が動かなくなることでわかります。轆轤は回っているのに、表面は止まっているように感じられます。器が本当に始まるのは、そこからです。

穴を開け、壁を引き上げる

芯の出た土に、親指か指先で穴を開けます。このとき、あとの削りのぶんだけ底に厚みを残しておきます。それから壁を引き上げます。指を筒の内と外に当て、土をはさんで向かい合わせ、ゆっくりと上へ動かします。一度引くごとに壁は薄くなり、高くなります。湯呑なら三回か四回です。

寸法よりも、釣り合いのほうが大事です。湯呑は径より背が高い器ですが、その差はわずかです。卓の上に落ち着いて座り、それでいて手のなかでは細く感じられるくらい。口縁は指先か、なめし革の細片で仕上げます。唇に当たったときやわらかであってほしいからです。硬く鋭い口縁は、ほかがどれだけよくても器を台無しにします。

把手をつけない理由

把手のない器は、飲むものの温度に気づくことを求めます。持てないほど熱ければ、飲むにも熱すぎる。このかたちの背後にあるのはその単純な理屈で、それが器の使われかたを変えます。両手で持ち、少しゆっくりになり、注意を向けることになるのです。

同時に、壁の厚みが正しくなければならないということでもあります。薄すぎれば指を焼き、厚すぎれば手のなかで死んでしまいます。その釣り合いを取ることが、このかたちの技術のほとんどです。そのことは手作りの器が手になじむ理由に詳しく書きました。

轆轤を降りてから

挽き上がった器は半乾きまで乾かして削り、完全に乾かしてから素焼きし、釉薬を掛け、炻器の温度でもう一度焼きます。どの段階でも器は変わり、あるいは失われます。手作りの器に同じものが二つとないのは、これもひとつの理由です。

工房で仕上がった湯呑は、支度が整い次第現在の作品に並びます。一点ずつ撮影しているのは、どれもそれ自身の器であって、原型の複製ではないからです。